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2019年10月17日

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 クワンソウの花。


 クワンソウは萱草の方言名。「萱草」が訛ったもの。


 クワンソウの和名はアキノワスレグサ(秋の忘れ草)。
 秋に花を咲かせることからこの名がある。
 沖縄関係の植物図鑑にはクワンソウでなくアキノワ
 スレグサで載っていた。

 別名はトキワカンゾウ(常葉萱草)。冬も葉が落ちず
 綠の葉をつけていることから。

 常緑多年草。毎年花を咲かせる。
 ユリ科ワスレグサ属(へメロカリス属ともいう)。
 ヤブカンゾウ、ノカンゾウ、ホンカンゾウ(シナカン
 ゾウ)、ユウスゲなども同じ仲間という。

 どんな花か分らない初めて聞く名に混乱してくる。

  
 花は昼の一日だけ咲いて夜にはしぼむという。
 学名はへメロカリス。ギリシャ語の「hemera(日、
 日中)と「callos(美しい)を組み合わせた造語。
 英語名はdaylili(デイ・リリー)。一日限りの花
 のユリという意味か。


 「萱草」(かんぞう)は一般的にはユリ科ワスレグサ
 属の総称だそうだ。

 
 萱草の萱には「忘れる」という意味があり、このこ
 とから「忘憂草(わすれぐさ)」とも呼ばれる。
 中国の故事ではこの花を食べたり、あるいはこの
 草を身に着けていれば憂さを忘れると考えられて
 いて、この思想が日本にも伝わった。(中野進著
 『花と日本人』より)





 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

 
 クワンソウの開花期間は9月~11月。今年は、
 少し遅いそうだ。
 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

  
 アキノワスレグサ・・・・詩的な名に惹かれその花が
 見たくなる。今帰仁村にクワンソウを栽培をしてい
 る「今帰仁ざまみファーム」の農園があると知り訪れ
 た。


 写真は今帰仁ざまみファームのクワンソウ畑(東側
 の一部)。場所は今帰仁村の上運天。運天港の近く。


 広い農園の中を走る道路の東と西の両側にクワン
 ソウ畑が広がっている。東側は未だ蕾の畑と開花し
 ている畑があった。まだこれからで11月までもっと
 咲くよという。

 遠くに見える青い山は乙羽岳。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 西側のクワンソウ畑。


 写真を撮るなら向こうが比較的よく花が咲いている
 と、ざまみファームの方が西側の奥の畑を指さし教
 えてくれた。
 
 朝8時半から花を摘んでいるので午後は花が少
 ないのだという。


 ざまみファームへの道を尋ねたとき、今帰仁の駅
 の売店の方が、午前中に花を摘むのであまり見
 られないよと話していたのを思い出した。 




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 花の多い場所を探して畑の縁を周り歩いた。

 花茎は低い。膝のあたりほどで30~70cm程度。
 天気はよく空は青い。遠くに浮く白雲を組み入れ
 腰を低くかがめて撮る。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

   
 百合に似た形の黄橙色の花。雄しべ6本に雌しべ
 が一本。

 


 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 花茎の先端は幾つかに分枝し花をつける。
 花は一日だけしか咲かないが、花は一斉に咲くの
 ではなく、数個ついた蕾が下の方から順々に開花
 するので、長い間、花が摘めまた観賞できる。
 


 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 近くの空に白雲が現れた。その白雲を背景に空に
 映える花を土手下の低いアングルから撮る。
 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 風に雲はちぎれ流れていく。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 早朝のクワンソウ畑。西側の畑。辺りは冷気でひん
 やりとして気持ちが良かった。

 
 前日、「8時半から花を摘む」と聞いていたので、早
 朝5時半頃にざまみファームに向かった。花摘みの
 光景が撮りたかった。

 途中通った、静寂な朝ぼらけのなかの羽地内海も
 美しかった。やはりヤンバルの早朝の風景はいい。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 クワンソウの葉にのった露が光る。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




   老いふれば親しみ深し忘れ草


   このごろは妻もなじめり忘れ草




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 早朝八時半過ぎ。東側の畑で花摘みが始まった。

 腰をかがめた姿勢や周りの静けさから、フランスの
 画家ミレーの落ち穂拾いの絵を何故か思い浮べた。
 花摘みから落葉拾いを連想していたためかも知れ
 ない。
  



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 摘み集めた花は加工場へ運ばれる。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 陽が高くなった。西側の畑の空を。南の国へ向か
 う渡り鳥のツバメが数羽飛んでいた。

 

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 クワンソウの花畑の上空を、遠く近く、高く低くと
 自由自在に飛び交う。

 ファームでは山羊や馬も数頭飼われている。また
 近くに牛小屋もあるので餌の昆虫が多い。

 今帰仁上運天。花も餌もある忘れ草の里。つばく
 らめはよもや忘れることはないだろう。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 高い花茎はおおよそ80cmほどあった。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 薄暗い馬屋の入口で一頭が餌を食んでいる。
 馬屋の暗さと外の明るさとのコントラストに、床の
 の水に映る馬の影が美しく絵になっていた。

 馬や山羊の糞はクワンソウ畑の肥やしになる。




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 一週間ほど後、またざまみファームへ行った。
 東側の畑は前よりも多くの黄橙色の花が鮮やか
 に咲いていた。テレビ局も取材に来たという。
  
 クワンソウの花摘みはやんばるの秋の風物詩と
 なっているのだろう。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 摘まれては咲く。この調子で花は11月まで続く。
 

 今日は午後の2時頃に花摘み体験の方々が訪
 れるという。そのために午前の花摘みは行なわ
 ず花を残していたのかも知れない。



 午後2時までの時間つぶしに今帰仁城跡へ行っ
 た。



 
 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

 
 今帰仁城趾にもクワンソウの花が咲いていた。
 7~8年前にざまみファームから提供してもらっ
 たものだという。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 参道沿いに多く咲いている。
 石蕗や桜の時期にしか訪れたことがないので
 クワンソウの花が咲いているのを初めて見た。
 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 ざまみファームのクワンソウ畑では蝶はほと
 んど見かけなかったが、今帰仁城跡の参道
 周りには3~4種ほどの蝶が飛んでいた。

 ナガサキアゲハはクワンソウの花から花へ
 と飛びまわっていた。 




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 午後、ざまみファームに戻る。西側の奥の畑。
 片雲が散らばる空の下でファームの方数名が
 花摘みをしていた。


   クワンソウの里や彼方に乙羽岳





 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 細い鉄柱は散水機。


 
 
 
 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 クワンソウ花摘み体験ツアーの方々。

 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 一人一袋を手に花を丁寧に摘んでいく。
 ツアーでなく家族や友人と訪れた方々も数組いた。



     忘れ草摘めばあれこれ思いだし
   
   


 クワンソウ(秋の忘れ草)の花



 忘れ草は万葉びとも愛した。

 万葉集には忘れ草を詠んだ、大伴旅人、大伴家
 持、柿本人麻呂と教科書で知った歌人のほかよ
 み人しらずの歌が幾つかあるという。 
 

   
   忘れ草我が紐に付く香具山の
   古りにし里を忘れむがため 

              (大伴旅人) 


 旅人は太宰師として大和を遠く離れた筑紫に赴
 任していた。


   
   忘れ草我が下紐(したひも)に付けたれど
   醜(しこ)の醜草(しこぐさ)(こと)にしありけり

                    (大伴家持)

 家持は旅人の子。家持の歌の口訳は、「恋の憂さ
 を忘れるという忘れ草を、私は下紐につけたのだ
 が、このいまいましい草よ、ことばだけでした」(訳
 は中野進『花と日本人』) 
 

 忘れ草。万葉歌人も親しんだ花と知ると、より魅力
 を感じ忘れられない花になる。


 忘れ草を詠んだ歌は琉歌にもある。

  
    忘れ草とまいて忘らてやりしちも
    思どまさやべる里が姿


 口訳「あんまり恋人のことばかり思っているのは苦
 しいので、忘れ草を食べて忘れようとしますけれど
 恋人の姿を思う情けが、いよいよ増すばかりでござ
 います」 

 琉歌の引用と口訳はともに、今は懐かしい新星図
 書カラー百科シリーズの城間朝教著『沖縄の自然
 〔植物誌〕』(昭52)より。この本には植物に関する
 琉歌(227首)が拾い集められ、各植物ごとに掲載
 されている。

 よく図書館から借りるが古本の味わいがある。

 
  

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 ていねいに花粉を取り除く。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花



 指定の紙袋で一袋600円の体験。

 チラシには裏に花の摘み方、クワンソウ花の酢漬
 クワンソウ入りヒラヤーチー料理の作り方。裏に
 はクワンソウについての豆知識が印刷されている。

 クワンソウの料理については、
 ネットで『沖縄クワンソウ普及協会(クワンソウ/
 アキノワスレグサ)』を検索すると見れる。


   

 クワンソウ(秋の忘れ草)の花

  
 ファーム内にある店。

 店先にクワンソウの苗もあった。1ポット200円。
 クワンソウは株分けして増やす。台風などにも強
 く育てるのは簡単らしい。
 


 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 クワンソウを原料とした商品を展示販売している。 
 

 クワンソウ茶は不眠に効くだろうか。ファームの方
 に訊ねた。アンケートの結果では眠れる人とそう
 でない人がいたそうだ。不眠にはお茶よりはクワ
 ンソウ酵素がいいという。


 クワンソウを八重山諸島の方言では、ニーブイグサ
 あるいはニーブイカンゾウという。
 八重山あたりではよっぽど効果があったのだろうか。

   
   (追加)
   後日、クワンソウのお茶を購入して飲んだ。
   他のお茶を慣れている舌には、最初はお茶らし
   くないと感じた。

   しかし、何日かすると飲み慣れ、その特有のま
   るっこい味が時には恋しくなる。  


 なお、訪米では萱草は観賞用の美しい花として輸
 入され品種改良も盛んに進められているという。
 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 今帰仁村内で運天港へ向けて車を走らすと
 途中の三叉路(あるいは十字路)にざまみファーム
 と記された小さな看板がある。
 
 その矢印の方向へ進み、しばらくすると写真の
 大きな看板が見える。




 
 北中城村で見つけたクワンソウ

 ヤンバルは遠い。中部地区でクワンソウの花が
 見れないだろうか、また普通の路地や自然な風
 景の中に咲いている様子で撮れないかと思った。

 北中城村の2人の方から2カ所を教えてもらった。
 いずれも北中城村。人によって植えられたもの。 



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 北中城村大城集落。集落内の道路端の小さな花
 壇に数株植えられている。うち1本花が咲いていた。
 
 


 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 北中城村安谷屋。北中城中学校前の農地内。
 道路端の畑の縁沿い30mほどの距離にクワン
 ソウが植えられていた。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花


 センダングサの花で吸蜜する蝶はアオスジアゲハ。
 クワンソウの花に止まることはなかった。
 
 今帰仁城跡の参道でも見かけたが、クワンソウ
 の花に触れるかのように飛んでいても、止まり吸
 蜜することはなかった。



 クワンソウ(秋の忘れ草)の花




 クワンソウ(秋の忘れ草)の花



 クワンソウは管理されていないと、花の咲かない時期
 に雑草にまぎれ刈り取られてしまうことも多いようだ。




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Posted by 積雲 at 21:00│Comments(0)草・木・花
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